「文章がうまくなる13の秘訣」を読んだ
今日読んだのは、
「早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣」近藤勝重著 幻冬舎
”まえがき”によると著者は、早稲田大学で週に1回、文章表現の講師をしているジャーナリストだ。
そして、思ったことを言葉にするのは難しい、思い出すこと、思いつくことを具体的事柄として描写する。心中にわいてくる思いの言語化に努める書き方が賢明だと言っている。
身を持って体験したことをいかに伝えるか。その手立てを考えつつ授業の「紙上編」として、まとめている。
この本の中で、今回も自分が気になったところだけを少し解説する。
興味があれば、本を読んでみてください。
- 作者: 近藤勝重
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2010/01/25
- メディア: 単行本
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早大院生と考えた文章がうまくなる13の秘訣
第1回 文章表現の基本「人プラス物」
【秘訣1】
「人プラス物」を題材に、物言わぬ「物」が語りはじめる文章を書こう
- ぼろぼろの紙切れが語っていること
「物に託して文章を書こう」
リストの状態は戦争の悲惨さをも語らずして語っている。
- 物に託す作句例
胸の内にある感情は、形容詞ひとつで表されてもわからない。
事物をして語らしめる。それが効果的。
- 「人プラス物」の化学反応は強烈
作文は「人プラス物」で書くべし。
- 小さな不幸の先に共感を用意しよう
小さな不幸の先に共感が用意されていると、読み手はぐっとくる。
「人プラス物」の物は一つに限る。
■課外授業Q&A/文章上達の早道は?
・早く文章がうまくなるには、いい文章を真似る。
・谷崎潤一郎は「多くの物をくり返し読むこと」「実際に自分で作ること」と言っている。
・真似るというのは、具体的に書き写すのがいいようです。
第2回 何を描写し、何と説明しないか
【秘訣2】
「つらい」とも「悲しい」とも「うれしい」とも書かず、描写に徹する表現法を学ぼう。
- 藤沢周平さんに学ぶ抑制された表現法
- 文章も演技同様、過ぎたるは及ばざるがごとし
抑制のきいた文章の方が読者によく届く。
- 城山三郎さんに学ぶ心情を吐露しない表現法
- 吉村昭さんに学ぶ視覚的に明晰な表現法
- 「はじめに言葉ありき」ではなく、「体験ありき」
第3回 文章をわかりやすくする工夫
【秘訣3】
「自分にしか書けないことを、誰が読んでもわかるように書くこと」を目指そう。
- 文章で大切な三つのこと
「誠実さ」:人の言葉でなく自分の言葉で
「明晰さ」:自分が何を書こうとしているのか、どう書いているのかを、はっきりつかんでいる
「わかりやすさ」
- クラス全員がわからなかったI君の文章
テンス(時制)の問題があいまいだと書かれている内容がすっと頭に入らない。
- I君が書き直した文章
- I君の文章に手を入れてみる
- 実作上、心がけたい三原則
①事物を具体的に描き出し、そこから答えをひき出す。
②「生きるとは」あるいは「人間というもの」を頭のどこかに置いて書き進める。
③人、物合わせて物事全般の現在・過去・未来を見つめつつ書く。
■課外授業Q&A/名文とは
名文などというものは存在しない。君たちがこれが名文だと思えば、それが名文だ。
第4回 情景描写と心模様
【秘訣4】
夕暮れや雨は言葉以上に心を伝える。
情景にその心を溶け込ませ描こう。
- イメージで読み手を誘い込む
情景描写は説明しにくい心模様をイメージの作用とともに伝えるという点ではそれ以上に効果があるかもしれない。
- 夕方と男の心模様
情景をもってその心を語らしめよ。
- 雨音もまた心の声
- 情景描写に抱く共感性
情景描写の強さは、時間と空間をともにして何かを感じあう人間ならではの共感性がある。
- 村上春樹さんが描く情景
- 情景をしてその心を語らしめよ
第5回 文章は体験がすべて
【秘訣5】
文章の源泉は体験である。
とりあえず具体的な事物の描写から始め、長期記憶に書き込まれた体験で肉付けしよう。
- 見たこと聞いたことは先に、どう思つたかは後で書く
言語は形のないものに形を与えるものであっても、心の反応など無形のものはやはり書きづらい。
書きたいそのことをどう思うかより、そのことを五感がどう受け止めていたかを探ってみる。
- 「思い」は書き進めていくうちに表硯できる
- 『ひらめき』をつかむ三つの行為
文章を書くということは脳の長期記憶に蓄えられているおびただしい数の体験情報をどう引き出すか。
・ひらめきをもたらす外からの働き①エッセイや対談集を手に取る
②街をぶらぶら歩く
③誰かと談笑する
歩いて五感を刺激する。いろいろ見聞きして情報を得る。人も歩けば題材に当たる。ひらめきも得られる。そしてそれが文章になる。
- 題材が浮かんできた具体的ヶ-ス
- 忘れずメモを取ろう
大事なことです。頭に浮かんだことはその場でメモを取る。
■課外授業Q&A/原稿用紙派とパソコン派の文章の違いは?
【秘訣6】
屁理屈でいい。独特の視点で起・承・転・結と文章を転がしてみよう。
第6回 書きたいことの組み立て方
- 文章の良し悪しは視点で決まる作文は作るもの。屁理屈、おおいに結構
人も事象も簡単に決めつけて見ない。
こういう人物にはまたこういう見方があるもんだという見方を身につけることです。
書けば考える。考えれば気持ちも変わる。
‐作文は作るもの。屁理屈、おおいに結構
意表に出た方が面白い。
- 現在‐過去‐未来と起・承・転・結の使い分け
現在ー過去(背景)―未来の内容が備わってこそ、まとまった情報たり得る。
- 起・承・転・転で書いてみた
無理してきれいに終えようとなどと思わなくていい。
第7回 人物・感情表現法
【秘訣7】
心と体の反応を表情に見て取り、人物がイメージできる表現法を身につけよう。
- 「言った」「述べた」だけでは伝わらない
感情表現の有無で「言った」も変わってくる。
- 肯定、否定、その中間で考える人間の感情表現
人間の感情は喜怒哀楽だけでもたくさんの表し方がある。かつ、喜びにも大きい、小さい、中間と大別できる。
これを表情、仕草といったぐあいにわけると、大変な数のことばが考えられる。
対立語を「目(眉)」「口(声)」「顔全体」に当てはめて感情表現を考える。
- 脳大感動はどう表すか
■課外授業Q&A/いまの書き言葉はどのように成立したのですか
第8回 五感と比喩
【秘訣8】
五感は身体のことばである。比喩の表現では視・聴・臭・触・味をフルに生かそう。
- たくらめば書くのが楽しい
- 山田詠美さんの「目」
文章表現で学ぶべきは心を読み取る目、変化に気づく目、そこにあることを確認する目、そして忘れまいと記憶に刻もうとする目。
- 五感と生と死の感覚
- 忌野漓志郎に比喩を学ぶ
手あかのついた擬音より、音を想像させたほうが伝わる。
- きゃらきやらと川は流れる/黒はすべての色を黒にする
第9回 自分自身をどう表すかー書き出しから終わり方
【秘訣9】
気恥ずかしくてさらけ出せない「自分自身」を勇気をもって書いてみよう。
- ここまで書くのなら最初の一行は必要か
自分自身に人間というものの強さや弱さを理解する手掛かりがある。
- ここまで書いて最後の言葉は必要か
- 「自分自身」のとらえ方
外形的なところから自分を描いてチラッと内側の自分を見つめる手法も参考になる。
■課外授業Q&A/作文を書けば元気にも優しくもなれる
第10回 間と推敲
【秘訣10】
文章も間がないと暑苦しい。せっかく書いたのに……、いや、せっかく書いた文章だから削って、よりいい文章にしよう。
- 間と日本文化
書き進めていくとき、接続詞や副詞をあまり気にせず使えば、文章の筋道を立てやすくスピードは飛躍的に増す。
いったん書いた文章を見直し、読み直すことは大切。
- 原稿用紙は文の庭
削るは間引く作業。
- 悪い癖のチェック
・文意に不要な接続詞、副詞の削りを忘れない。
・段落は多く、読点は少なく。
・言葉の重複と文末への気配り。
・「ので」「だから」「~が、~」はわかりにくく長文になりがち。
- 省略と飛躍がもたらす味わい
第11回「書く」より「聞く」
【秘訣11】
「書く」は「聞く」から始まる。言葉不足や文章力を嘆くより、相手の話から言葉を頂く努力をしよう。
- 死刑囚の「布団さま、雑巾さま」という言葉
物事の多くは聞くことからはじまる。
- なぜ耳は自分で閉じられないのか
■課外授業Q&A/決まり文句はなぜつまらない?
決まり文句が本当にあなたの心にわいた感情を伝える表現になっているかどうか。
文章は自分自身の言葉で表すところに価値がある。
第12回 事実から真実へ
【秘訣12】
真実は一つの事実で一変する。
疑い深く細部にこだわる物書きの目を養おう。
- 「二宮尊徳は泥棒なり」という説
取材して得る事実は量もさることながら質の問題が大きい。
事実の取捨選択によって発信される情報はまるで異なる可能性がある。
- 事実が情緒表現を拒む事例
ノンフィクションは事細かく記述してこそ伝わります。
事実は情緒的な文章を必要としない。
事実があればあるほど場面場面の描写は精緻を極め、説明的な言葉など不要。
- 司馬遼太郎さんが一番恐れた人
事実の収集に力を入れるのはジャーナリストだけではない。
作家も細部を描写するに際し、事実にこだわっている。
- 「雪は何時にやんだのか。それがわからないと書けない」
歴史小説を書くときのディテールの問題は、時代の雰囲気や当時の人間の意識をどうとらえるかといったこととともに、緻密な作業を伴う。
第13回 文章力がつく読書術
【秘訣13】
小説を読みつつ、ひと呼吸置いて次の文章は?と考えてみる。
読書と一体のこのトレーニングで文章力を高めよう。
- そのセリフをどう考えるか
心情は描写せよ、説明するな。
文章は描写文と説明文、そして会話文と地の文がそれぞれの役割をいかんなく発揮し、たがいに補いあえれば、その表現力は映像より勝るのではないか。
- その胸中をどう説明するか
小説の中の心情表現を学んでもらうほかに、自分が推察したことと作家が小説で実際に書いている文章とを比べてもらおうという狙いがある。
■課外授業Q&A/ミステリーを楽しみつつ表現力を身につける方法は?
ミステリーは事件の謎解きと人間心理の二本立てで展開するものだから、犯人と探偵、あるいは刑事の心理を自分なりに推察して、この場面ではどんな言葉を口にするだろうと考えてみる。