勉強法の科学~心理学から学習を探る~を読んだ。
岩波科学ライブラリーの「勉強法の科学~心理学から学習を探る~」を買いました。
この本は、高校生を対象とした本だけど、内容は認知心理学のことなど、大人でも十分読める本ですね、面白い。
この本でも、わたしの興味があるところだけを少し紹介する。
あなたが興味を持ったら、購入されるといいでしょう。
勉強法の科学?心理学から学習を探る (岩波科学ライブラリー)
- 作者: 市川伸一
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2015/08/20
- メディア: Kindle版
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あくまで個人の感想だからね。
それに、著者の言いたいことを読み取れているかどうか、わからんので。。。。
勉強法の科学~心理学から学習を探る~
「はじめに」で小学校の教科書に書いたものを紹介しているが、これが深い。
覚えること、伝えること、分かること
覚えることの説明として面白い例をあげている。
次のような数字の列を覚えてみよう。
149162536496481
バラバラの数字のようで普通では覚えにくいと思う。
ここで大切なことは、なんらかの関係を見いだせば、覚えやすくなるということである。
上の例は、掛け算で考えると覚えられる。
1(1×1)4(2×2)9(3×3)16(4×4)25(5×5)36(6×6)49(7×7)64(8×8)81(9×9)
- 兄は、足が痛いと言っている
- 弟は、歯が痛いと言っている
- 父は、うでが痛いと言っている。
ただくり返して覚えることもできるが、少し時間がたてば曖昧になる。
しかし、「なぜ、そのようになったのか」という理由を付け加えれば、たちどころに覚えやすくなる。
- 兄は、(サッカーをやり過ぎたので)足が痛いと言っている
- 弟は、(チョコレートを食べ過ぎたので)歯が痛いと言っている
- 父は、(重い荷物を持ったので)うでが痛いと言っている。
これなら、なかなか忘れそうにない。
このように、物事の間の関係がわかれば、わたしたちは、実によく覚えることができる。
ただし、物事の関係がわかるためには、知識が必要。
1.どうすればよく覚えられるか
- 「メモリースパン」
人間の記憶には、一次的に意識に残っている”短期記憶”と、後から思い出せる”長期記憶”があると言われてきた。
人間の短期記憶には容量の限界がある。この限界を”メモリースパン”(直後記憶の範囲)という。
メモリースパンは、だいたい7個前後で、すごく安定した値。
- 「記憶の貯蔵庫モデル」
認知心理学の初期に考えられたモデル。
外からの情報は、まず短期貯蔵庫に入る。
短期貯蔵庫は容量が小さく、忘れてしまう性質がある。
”リハーサル”:忘れないようにするためにくり返す。
リハーサルをある程度以上行うことで、長期貯蔵庫に入れることができる。
”想起(思い出す)”:長期貯蔵庫は必要な時に、短期貯蔵庫に戻すことができる。(自分の電話番号…)
たくさんのことを覚えておくためには、リハーサルが必要だけど、それだけではない方法があることが説明される。
- チャンク化大きなまとまりをつくる
わたし達の短期記憶の中にはだいたい七つくらいの項目しか入らない。
しかし、一つの単位は主観的なもので、その人によりひとまとまりが違う。
英単語なら、「a」がひとつの人も「automatic」がひとつの人もいる。
このひとまとまりを”チャンク”という。
短期記憶には、このチャンクが七つ入る。
そこで、覚える内容を工夫して、七つのチャンクにすると短期記憶に入りやすくなる。
- 有意味化意味を理解する
長期記憶として物を覚えようとするときには、覚えようとしているもの持つ意味が大事な働きをする。
”処理水準説”:何か情報を与えられたとき、形態的処理、音韻的処理、意味的処理の順に処理水準が深くなり、深い処理したときほど記憶に残りやすくなる。
- 構造化関連をつかむ
くり返しているうちに覚えられるようになるが、理解することでくり返さなくても覚えられるようになる。
理解するには、意味づけや情報を関連づける構造やルールを見いだすことも大事。
「112358132134・・・」この数列は”フィボナッチ数列(前の数字を足していく)”というルールがわかれば簡単に長期記憶になる。
バラバラの知識を構造化して覚えやすくする。
例えば、鉱物の名前を金属、石と分け、さらに貴金属、合金、宝石、石材などと構造化すると覚えやすくなる。
■丸暗記より理解する学びへ
勉強には覚えることがたくさんある。そのときどんな意味や構造をそこに見いだすかが大事。
自分なりの意味や構造を作って覚えると、記憶は全然違ってくる。
「どういう意味なのか」「なぜこうなるのか」
2.知識はどうとりこまれ、使われるか
- 「情報を取り込む」
文字を認識するとは
「ボトムアップ処理」:文字の特徴などを細かく分析して候補を狭めていって識別するというやり方。
「トップダウン処理」:文脈から判断して、ある程度の仮説を立てて、探っていくやり方。
私たちは無意識的に、知識とか文脈とかをうまく使いながら、文字を見分けている。
人の話を理解するときに、単語の知識や文法の知識を積み重ねていって理解するというやり方と、知識や文脈、あるいは期待に誘導されて理解するというやり方と、両方の理解の仕方がある。
- 「言語から命題的表現」
「命題」:意味内容を分解して取り出したような文。
頭の中に網目のようなネットワークが出来上がっていくことが、私たちが長期記憶の中に情報を蓄えるということ。
私たちが思い出すときは、ネットワークのどこかを”活性化”すると、網目を伝わって広がり目的の情報を探し出す。
つまり、知識はバラバラの状態よりも、関連をもってつながっているほうが、よく思い出せるということになる。
- 「イメージ論争」
「表象」:五感に対するあらゆるイメージをいう。さらに、言葉を聞いて、そこから思い浮かぶ知識、その対象に対する知識を表象というようになった。
「命題的表象」:文章やイメージは、意味内容が抽出されて、命題的表象となって記憶される。
- 「スキーマによる文章理解」知識は使うためにある
私たちが情報を取り込むときに、トップダウン処理をうまく使うことが大切。
トップダウン処理がうまくいかなかったときは、情報を理解することも、記憶することもできなくなる。
「スキーマ―」:「○○はどういうものか」という一般的知識、経験的知識。
- 「常識のあるコンピューター」常識のあるコンピューターは人の話が分かる
人の話がわかるような人工知能をつくるときは、人間のもっているようなスキーマ―を、コンピューターにもデーターとして与えなくてはならない。
人間は、すでに持っている知識をもとに知識を広げていく。
話がわからない、本読んでもわからないとかいうときは、それがわかるための前提知識が不足していたり、あやふやだったり、誤っていたりしていれば、当然わからなくなる。
■理解の前提となる基礎知識をチェックする。
- 概念
- スキーマとほぼ対応した言葉。○○とはどういうものか。
- 学校の今日では、概念の理解が学習の中核であり、最も困難なところ。
- 用語の理解で大切なことは、どういう意味なのかという定義を押さえることと、具体例を知っておくこと。
3.いかにして問題を解くか
ここでは、問題を解くときの頭の中の働きを、認知心理学などを使って説明している。
少し専門的なので、興味がある人は読んだ方がいいが、ただ、勉強法を知りたいだけの人には面白くない内容ですね。
- [問題理解と解法探索]
- 「文章理解も問題解決」
- [物理法則の素朴概念]
- 「固着と制約」
- 「失敗経験から教訓」
■数学は暗記科目か?
4.やる気の出るとき、出ないとき
ここは動機付けの認知理論から、「やる気」について説明されている。
内発的動機付けでは、知的好奇心・納得感・達成感・進歩の実感などを満たすとやる気が出てくる。
そして、とりあえずやっているうちに面白さが出てくることがあるというのが、気になった。
- 「学習同期の2要因モデル」
- 「随伴性認知と実行可能性」
- 「セルフ・ハンディキャッピング」
■自分の学習意欲をどう引き出すか